「陸軍省軍務局」昭和軍事史叢書、上法快男

正直なにが読みたかったのかというと、明治から大正に掛けての軍の有り様だとか(軍隊そのものが知りたいんじゃなくて、一般社会に対しての影響力がどの程度あったのかのほうを知りたかったんですね)、軍港や鉄道などへの関与に関してだったのだが、どうもあれですね、この本じゃなかったね? というのが正直なところ。

ただ、これはこれで結構な収穫だったなぁ、と思ってます、大変面白かった。

 

そもそもこの軍務局というのは陸軍全体の全体事務に関する部分を扱う部署らしく、具体的になにをしているのか、というのは今もはっきりと掴めているわけでもないものの、この部署から世に出て行った多くの軍人がいるよなー、というのは一目瞭然。

そもそもフランス式から始まり、ドイツ式へと転換、その後もドイツへの傾倒が続き、非常なアメリカの軽視が行われていたこと。関東大震災のあとの軍縮に対し、戦後に至るまで延々延々と恨み言を述べ続け、あれが全ての元凶と言わんばかりの態度とか。

満州事変の当事者の石原莞爾が、今の中国はかつてとは違う、侮ってはならない、と発言したのを嘲笑って、そんなことはありえない、で済ませてしまう言動とか。

なんというか、人道的に酷いこと、悪いことをしている、というよりは、頭の中にあるアウトラインのみが大切で、あまり現実には興味がない態度が一般的で。それこそが兵士として一流である、という、あとの時代から見るとなにがなんだかよくわからない風潮が一般的だったのかなぁ、と個人的には見えますし、著者さんも同じご意見。

国家よりも戦争が優越する、とまで言い出す陸軍を止めてくれる政治家いなかったなぁ、というのは、多分当時から考えていたことなんでしょうね。陸軍内部からの静止は、下手すると殺されて終わりだしなぁ、なんだろうねこの歴史、難しいよなぁ。