「明治国家をつくった人びと」瀧井一博

この本、というか、この著者さんはもともと“文明史”とでもいうようなフィールドワークを持ってらして(私も文明史のほうがいいタイトルだと思います)、多分最初からそのつもりというか、その覚悟で読んだほうがいいような本ですね。
著者さんが中公新書でこの本の雑誌連載時期に伊藤博文を扱っていた関係で、全体的に彼が本の中に出てきてしまって申し訳ない、と言ってらしたんですが、そこはいいんだよそこは! と言いたい気分だなぁ、伊藤博文がそれぞれの時期、どのような政府の位置でなにをしていたのかの説明もあり、彼を通してそれぞれの章に出てくる人物を捉える、ということである程度のまとまりを感じることが出来たように思います。
アメリカを日本の岩倉使節団より早く見聞していたジョセフ・ヒコの章で、征韓論にて失脚中の木戸孝允伊藤博文が話を聞くことがあった、などは面白い話でした。アメリカの大統領に対して、そこらに平服で出てきてしまうことはどうしても違和感があったみたいですね、日本人。ハワイなどへの見解も述べられていたんですが、中国のように権威を振りかざすのではなく、外に国を開き体裁を整えることを日本も目指すべき、と語っていたんですが、残念ながらその後ハワイはアメリカに併呑されてしまったのだとか。

 

オーストリアの宮殿はそもそも民族が雑多になりすぎたハプスブルク帝国を素地とするために先祖還りをして、ギリシャ・ローマ式にしたのではないか、というのは確かに面白い。
やっぱりこの時期はイギリス議会が進んでいるかなぁ、話し合いによる決定。それと、伊藤博文が井上殻という人物を通して天皇主権というものを提案していた話がされていたんですが、そもそも民主制への不安が反映されたものだ、と言われるとなんとなくわかる部分も。
個人的に伊藤博文が、意見別れても明治天皇と人間的に通じてたってのは好きな話だなぁ。