「横浜開港と交通の近代化-蒸気船・鉄道・馬車をめぐって」近代日本の社会と交通1、西川武臣

一応鉄道の開通までは触れてはいるのですが(日本最初の鉄道は横浜と東京を結ぶものだったので、駅名で言うと新橋、今の浜松町)どちらかというとこの本そのものは、鉄道前史と表現したほうが近いんじゃないのかなぁ。電信が通り、郵便が少しずつ浸透して、もともと公道としてしか使えなかった東海道が、民間に開放されて、人力車や荷馬車などの通る道ともなり、横浜と東京を結ぶ蒸気船が走り、「横浜道」と呼ばれた八王子と横浜をつなぐ道によって主要な輸出品であった絹が運ばれたという歴史の話なんですが。
面白かったのが横浜が寒村でしかなかった、というのは事実ではあるものの、それ以前にこの地で商業利用が盛んだった神奈川湊の存在があってこその横浜の素地が、というのは、ちょっと表現が違うものの聞いたことはありますね。既存の港を海外貿易に使って、そこにダメージがあると困る、という算段だったようですが。
(東京の地での直接の開港も、だいぶ粘られたようですが、まあ正直、そっちを避けたかった気持ちはわからないでもないよ。)
ただしこの後、横浜の隆盛と神奈川湊などの近辺の港の衰退はセットのようなものとなったようですが。結果的には、ある程度土地があったために、近代的な設備を整える素地があったということなので、良い選択でもあったのではないでしょうか。

 

もともと東海道品川宿(一の宿ですね)、川崎宿、で神奈川宿、という位置関係だった関係上、商人などの存在もあり、横浜に港が出来た時点でわりとあっさり引っ越してしまい、東京に移したい外国の意思も神奈川湊と両立させたい政府の意思も無視して、内外の商人が横浜で商売を始め、それを結局追認せざるを得なかったらしく、逞しいなそれはw
鉄道がこの地にきて、どれだけ変わるんでしょうね、もう少し読みたかったなぁ。