「魔術の殺人」クリスティー文庫39/ミス・マープル5、アガサ・クリスティ

 

キャリィ・ルイズという「ちょっと特別だと周囲から扱われている人物」を中心にした館の話なんですが、正直なところ、読者にはあんまりこの人が特別かどうかってのは伝わってこないような気もするんだよなぁ。
まあでも、あんなにぎすぎすした館で、全くそれを気にしない彼女の存在は実際にその場にいたらありがたいものなのかも、と思わないでもないものの。
ただ、彼女がいなかったら多分一緒にいることはなかったんだよね、あの面子。

 

で、その彼女がわりと仕方ない事情(1番目は死別、2番目は相手が浮気)で3度の結婚を繰り返し、その上養女とそのあとに生まれた実の娘がいるので関係が錯綜し。
彼女が死んだら確かに全員得にはなるんだけど、生きてても十分援助が貰える、という中でキャリィ・ルイズが狙われる理由が誰にもわからず、しかし毒が盛られているのではないか、という疑いがあってそれに気付いた義理の息子が銃殺され、と話が進んでいくんですが。
正直話の焦点がどこにあるかわからず、妙に全体的に亡羊としてるんですよね。
下手するとキャラがほとんど記憶出来ない人も少なくないんじゃないかな、私も、4割、くらいかなぁ。ピパの娘と妙な雰囲気の青年だけははっきりしてるんだけどね!
で、最後まで読んだ上での感想が「あの錯綜した人間関係全部まるっと関係なしかぁぁぁ!!」みたいな。これで別にネタバレにもならない多分。だって関係ないし。
そして、キャリィ・ルイズが人の悪意のわからない天使のようなおばあさまではなく、人の作り出す幻影が見えない人なのだ、とマープルさんに言われてからが本番だと思います、というかむしろそこが最大のトリックだよね? そっからどんどん館の中の人間関係が引っ繰り返されていくんですが、そこまでに覚えてないと多分この話全然面白くないよなww