「日本私有鉄道史研究-都市交通の発展とその構造」中西健一

もともと日本の私鉄ってのは官設の鉄道が出来たあとに国にその資金がないというところから始まりまして、それが一旦明治の終わり頃にまとめて買収されて「私鉄の幹線時代は終わった」というようなことが言われているわけですが(幹線の定義も怪しいんだけどなw)。
その辺はまあ聞いていたんですが、単に買収資金がなくて計画が出てきてからえらく時間が掛かったのかと思っていましたら、不況の時代になると鉄道株を手放す人間が増えるので、国家買収計画がありますよ、と仄めかしてそれを阻止してる資本家がいたんだよね、という話は始めて聞きました、ただ、彼ら自身は特に本気で国有化を願っていたわけでもないようで。
日本の初期の株式市場の頃はそれこそ鉄道建設以外に特に多額の資金を必要としなかった関係上、鉄道株しか存在せず、この私鉄国有化後に株式市場そのものが低調に陥ってしまったという展開を考えるとまあ理解出来ない理屈でもないな。
で、ちょっと退屈だったんですが、ドイツ的な鉄道国有化だ、という批判に対し、そもそもそのドイツの国有化にしたところで本当に政治的見地軍事的理由のみで国有化されたのか、ということを検証しまして。

 

そのあとくらいの時代から戦中くらいまでの資本家と私鉄との関わりに関してが述べられ、若干の副業の展開(あんまり大して新味もなかったですね、わりと知られてる内容)に触れて、大正の頃の私鉄の労働環境についての章で終わり、という感じの構成です。
個人的には関東の私鉄に興味があったんですが、ぽちぽちとネタが拾えた感じで良かったですが、全体の論調だと一番最初の章くらいしか特に価値は感じないかも。
ただ、明治の私鉄国有化に絡んだ資本家との駆け引きに関しては間違いなく価値ありました、もう少し政治の側の事情語ってある本もあるといいんだけどなぁ。