「日本の鉄道-成立と展開」鉄道史叢書2、野田正穂・編

実際には編集者の名前は野田正穂、原田勝正、青木栄一、老川慶喜、と並んでいまして、私この辺の方たちが正直どういう方かは知らないながら好きでして(この中だと老川さんだけ若いんだね、最近出た「井上勝」も読んだばかりです)、なにか共通点があるのかな、と思ったんですがわりと専門分野もアプローチの仕方も違うんだね、ふーん。
あとこの本に関わってる人だと和久田康雄氏も好きです、多分文章とスタンスが似てるんじゃないのかなぁ。
この本は前書きにもありますが、最初に作られた日本の鉄道の全体史の本なのだとか。

 

野田正穂氏は最近読んでますが株式市場からの鉄道建設費の流れを扱ってるんですよね、所期の株式市場はほとんどの会社が内部資金によって立ち上げが可能だった関係で、株式による資金供給が必要だったのが鉄道などごく一部に限られていたらしく。
で、結構最初の頃の歴史には財閥も絡むし政治も絡む、明治末期には有力私鉄の半分以上である私鉄17社の国家買収があったんですが、この時にまず説得しなくてはならなかったのが鉄道株を持っていた三菱財閥だったとか、政府の中にも鉄道の国有化に傾いていた政党や政治家と、そうでもない、資金は民間に頼るしかない(どちらにも一理あると思っています)という層がいて、その争いがあったとか、そういう話が語られていまして。
大変残念ながら、最近刊行された鉄道の通史本からはこの手の視点がごろっと抜け落ちていて、一から発掘して辿り着こうとしてる人もいるみたいではあるんだけどね…。
ただあくまでも古い本なので若干説が古かったり、産業などの視点には触れられてないかなという気もする部分もぽちぽちありますね。戦時前後の話だけは今のほうが進んだ部分あるんじゃないかな、ただまあ、うん、こっちの本のほうが内容断然上だなぁ。