「「鉄道唱歌」の謎-“汽笛一声”に沸いた人々の情熱」交通新聞社新書054、中村建治

 

鉄道唱歌そのものはこの本でも出てきていた駅弁大会で流れていたものを聞いたのが多分最初で、これを聞いた時には鉄道唱歌そのものを知らなかったと思うんですが、この名前を聞いた時にわりとすんなり「あ、あれか」と考えたんじゃないかなぁ。
とりあえず、最初のほうに大量にあった作詞者に関しての謎、そもそも2人いたのにほとんど歌われなかった作曲者や、その後第5集まで2人ずつ用意された作曲者たちが何人か未提出で関係ない曲を印刷したとか、全体的に杜撰な時代だなぁ、と笑ってましたw
表紙だけ先に作ってあとから中身を印刷するって同人誌みたいなことしてんなぁ。

とりあえず、後に出された「路線別・汽車シリーズ」(最初の鉄道唱歌の出版社とは別で作詞家さん同じ)の出版社がもともとの鉄道唱歌の版権を持っていて売り払った、というのはさすがにデマって言っても良さそうですが。
あとはまあ、傍目にはグレーかなぁ、特に無名の人の原稿を参考にした辺りはね。あれだけ多産で同じジャンルを得意とし、その後もどんどん作品を作り続けたのだからそこまで積極的に疑う要因はないよ、という程度のことでしょうか。
わりと面白い話ではあったんですが、当時の混乱っぷりもあってほとんどが作詞家と出版社周りのことになってしまっていて、当時の様相があんまり語られてなかったのはちょっと残念。もちろん学校で教えていたとか、東海道線を一両貸し切ってパレードを行っていたとか、当時無名の作曲家のほうが軽快で、結局歴史には唯一つのメロディとして残ってしまったとか、そういう大まかなところは載っていたんですけどね。
今は多分、東海道線の明治33年の頃の様相なんて伝えるものはほとんどないし、そういう意味で残ってるんだろうなぁ。不思議なものですよね、なんか。