「外貨を稼いだ男たち-戦前・戦中・ビジネスマン洋行戦記」小島英俊

 どちらかというと初期の金融史や、財閥や小さな商会などの話が知りたくて手に取った本で、冒頭の森村ブラザーズとか、横浜正金銀行なんかはどんぴしゃの内容だったんですが、三井と三菱の(ここはいつ見ても得意分野が綺麗に別れてるよなぁ)成長が語られたあとくらい、日露戦争くらいの時代から戦時の事情がどうにも幅を利かせるようになって、けれど案外と第二次世界大戦の終わりの頃まで欧州に留まった日本人の数も少なくなく。
(むしろ潜水艦くらいでしか帰れなくなっちゃったんですけどね、初期の頃は人気薄のシベリア横断鉄道がまだ残っていたものの、ソ連のビザはソ連と日本の互換で出されたのでなかなか人数分に達しなかった、という説明されていて、ちょっとびっくり。)
(要するに特派員などを除くと偶然残っちゃったって言えなくもないんじゃそれ。)
むしろ戦後になって急激な成長、と言われているのも蓄積の結果なのではないのかな、というところまででしょうか、そんなに具体的な分析には至ってないんだよね。

著者さん自身もこの本を書き始めてから始めて知ったらしいんですが、戦後になるまで特にいないだろう、と思っていた洋行の職工も案外少なくなく、よくよく考えたら船舶の乗組員も立派な洋行の一員だよなぁ、ということを不明、と恥じておられるんですが、正直ほとんどの人の感覚ってそんなものじゃないのかなぁ。
個人的には洋行の銀行の詳細や、各財閥の成長なんかをもっと横断的に述べて欲しいなー、というのが正直なところだったんですが、まあ、この手の本がそれほどあるわけでもないし、これはこれでいいのかしら。
初期の頃はそれこそ三井の支店で日本人の洋行者をお世話していたらしいとか、いろんな手探りから曲がりなりにも成長していく姿はわりとわかりやすかったと思います。