「木造建築を見直す」坂本功

読み始めて一番印象的だったのが阪神淡路沖大震災の時に、木造建築に関わる人々がごく自然に災害地に集結し、そこで実地調査をしていた、ということが語られていたものの、それが普段から当たり前としていたことだった、と言われても、なんでそんな普段から修行僧のような精神でいるのかの説明がなかったんですが、ひょっとして、このご当人も「それが当然」と思ってらしたのかなぁ…ちょっとなかなか出来ないですよね。
(でも、木造建築の人たちってそれが自然なのかなぁ、うーん、すごいね。)

木材の歴史が語られているものの、正直なところ腐敗しやすいという事実はあり、木材を取り除くという解決方法は身も蓋もないながら、実際の歴史がそうだった、と言われてしまうともっともなんですよね、それがコンクリートなり鉄筋作りなりということになる。
阪神淡路沖大震災の時にも建築時期が問題なのではないか、と言われていたものの、時期に関係なく倒壊した住宅はあり、反面、地震に弱いのではないかと指摘されていたプレハブやツーバイフォーで倒壊した建物もなく(そもそも日本に入ってきて30年くらいしか経っていなくて古い建物というのもなかったそうですが)、ある意味で木造建築に対してかなりマイナスのこともすごく明確に指摘されていて、正直若干驚いたんですが。
木造と言われた時に自然木材のみで、という夢を見る人の気持ちもわかる、けれど現実問題として加工した木材を使わずに済ませることは出来ない。釘や金属が使われていないというのも、かなりの場合幻想であって事実ではないということ。
そして実際に木材と金属の相性が良くないこと、シロアリの存在、濡れたあと空気が篭もる場所の腐敗など、なんだろう、全体的にストイックなんですよね。このくらいの覚悟がないと木造建築に向き合えないってことなんだろうか、でも姿勢は評価したいなぁ。