「回り道を選んだ男たち」小島直記

回り道を選んだ男たち (新潮文庫)

回り道を選んだ男たち (新潮文庫)

 

 

本の中で出てくる『レイテ海戦』に関しての語り口を聞いていると従軍経験がある世代で、この本が刊行されたのが平成2年で、この本も人物随筆の第4弾ということらしく(もともとこの人の書いた個人伝記のどれかを検索で引っ掛けたのが読んだきっかけだった気もする)、まあだいたいどのような世代の人かはわかるのだけれども、犬養毅(木堂)が三菱と結び付いた金権政治家のように思われていた、という言い回しの時点で「へー、そんなこと言われてたのか」と考えてしまうのでどうも読むべき部分がちょっと違っていたような気もしないでもないかしら。
(そういう意味では、フランスのリシュリューの話が一番わかりやすかったかな。)
(多分この人の世代の感覚では、日本の政治家や著名人のこのくらいは知ってるよね、という感覚がズレてるんだろうな、で、フランスの歴史に関してはほぼ同じっぽいw)
ただ、正直なところ、経済を読んで財閥史を読んで政治事件をぽつぽつと読んでも当時の評価や噂みたいなものを読む術がほとんどないので、そこの部分が非常にありがたかった気もしないでもないのだけれどもね、当時の新聞だと読んでて意味わからないしなぁ。

ああ、でも木戸孝允伊藤博文のエピソードは若干前に読んでいた『明治六年政変』と重なる部分があったのでわかりやすかった気もする(伊藤博文が親分である木戸孝允を裏切って大久保利通と通じてややこしいことになった)。というより、木戸孝允の他人を貶める物言いって私生活でも公の場でもあんまり変わらなかったんだなぁ。でもこの人、全般的に卑屈みたいで自分のことにも後ろ向きだったみたいなんですけどね、うん。
徳富蘇峰徳富蘆花だと、私も蘆花のほうが好きかな、ただ、蘇峰もそういう時代だったと言われればそれまでというか、やっぱり少し気持ちはわかるんだよな。