「名刀虎徹」小笠原信夫

日本刀―日本の技と美と魂 (文春新書)

日本刀―日本の技と美と魂 (文春新書)

 

 

前から本を読んでいてなかなか把握出来なかったいわゆる「新刀」の初期の本で、時期は大雑把に戦国時代が終わりを告げ、江戸時代へと向かう頃、正確な年代がどうのというよりも、この後、刀がかなり形式的なものになる時代の寸前。
この時代を代表する新刀の刀工が、江戸刀工である長曽祢虎徹と、お抱え刀工だったという堀川国広。で、江戸刀工全体を縦断するような内容かな。
とはいえ、この時期にぽちぽちいたはずの民間からの需要や刀の格に関して、武器としての存在意義を変えつつあったはずの部分は特に踏み込まずに語られていないので、あくまで刀工寄りの事情、といったところでしょうか。
ただ、有名な江戸刀工に関してはかなり触れられてたんじゃないのかなぁ。
個人的には「非人・加州清光」に関してももうちょっと聞きたかったな、この時期にそこそこ知られている刀工が揃っているっぽい、と思っていたんですが、よく考えたら実戦刀からこのあとだいぶ刀そのものの意味が変わるわけだしなぁ。
(堀川国広は完全に一派だからまた別に専門の人がいる、んだよね? 常識みたいに挙げられているのに詳細読んだことないんだよ…。)

が、とりあえずなんとなく主張されているうちにまるで定説のようになってしまった師弟関係があるとか、暗殺のために作られた、という話が虎徹死後6年後なのでどうもありえなさそうなどなど。
有名な刀工なので派手めな逸話がぽこぽこ生まれているものの、当人は美しさよりも切れ味に拘ったどちらかというと無骨な存在だったのではないか、ということを主張していたような本だったかな。まあ正規の記録もないんだろうしねぇ、この業界も大変だ。