「建築探偵 雨天決行」藤森照信・文/増田彰久・写真

建築探偵 雨天決行 (朝日文庫)

建築探偵 雨天決行 (朝日文庫)

 

 

初っ端から名古屋の「中村遊郭」という土地が出てきていて、これはなんでも幕末の頃に突如農村の中に存在し、遊女らに自由商いを認めるというシステムの中で繁栄し、わりと勘違いでもなんでもなく非常に明るい遊郭だったんだよー、ということが語られていたんですが、確かに、建物といい出てくる人といい、真面目にフランク。
そして日本現存最古の幼稚園はキリスト教の精神で作られたのが幼稚園であるということはわかっているものの、そもそも非常に教育熱心なため一町会にて作られたために、宗教色を出来るだけ排する意味でどちらかというとお寺に近く。
他にも和洋折衷様式(見様見真似の初期の西洋建築風の偽様式)の中の傑作がぽちぽちと語られ、磯崎新が唐突に出て来たと思ったら「B級様式をそのまま残すなんてさーすが!」みたいな調子でした、うん、確かに独特だわこの著者さんたち。

で、東京駅のことについても語られていたんですが、オランダのアムステルダム駅に似てるってのは前からよく聞いていて否定肯定もあったんですが、ねえ、どっちかというと戦後の3階が焼失して2階建てになってからのほうが似てません?! と聞きたい。
(そもそも建築様式が違うので建築界からは「違くね?」と言われてたんだけどね、どっちかというとドイツ系の駅に倣ったって言われてますが、そのほうが時代的にも自然。)
ていうかそれこそこの本が書かれていた時代に東京駅の赤レンガ駅舎を残すだ残さないだでがたがたしてたんですね、残して良かったんじゃないでしょうか、結構な稼ぎになった…もとい結構な話題になってあれ以降ちょっと保存運動も楽になったんじゃないかしら。
ただまあ、初期のドラゴン(モンスター)と龍(神)の混乱なんかもそうですが、当事者がやべえって隠したがる気持ちもわかるけど、後世の人間にはそれも面白いもんだよな。