「福沢山脈(上」小島直記

 

前に読んだ福沢諭吉の本では洋学派として分類されていたものの、あくまで福沢門下に焦点を当てた本であるせいか、慶応義塾寄りの描写が多いかな、『学問のすゝめ』はともかく(この出版の世話を福沢門下の一人がやってるしね)、どっちかというと『西洋事情』の受け止められ方のほうが知りたかったのだけれども、ちょっと残念。
とはいえ、暗殺をしたら名が上がる! とばかりに狙われている福沢氏が、そういう文章の力でちょっとずつ世間を変えてったらしいのは伝わってきましたかも。

あと、政治家がほとんど出てこないせいか、甥の中上川彦次郎が三井との関係を作ったみたいに語られていたように読めてしまったんですが、正しいのかしら?
三菱は、それこそ高等教育そのものが存在しなかったこの時代に、学生の受け入れ先として相応しいところからして少ない、という関係で、しかし非常に評判の良くない三菱に可愛い学生を任せていいものか、と考えて本社に行ったらば、法被着てオカメ飾って確かなんかお客におやつ振舞っていたんじゃなかったっけw(前に三菱銀行の社史で読みましたよ)
腰が低くて大変に気に入ったみたいに語られてたんですが、岩崎当主という独裁者がいた分かお客には態度が悪くもなかったってのはたまに語られてますよね。
ただ、この時期にはどうも微妙になってるっぽいよね、まあ、完全な叩き上げだしな。
それと出てくるのが出版社や新聞社なんですが、政治との関わりはもうちょっと遅れるのかな? 福沢当人は再三の明治政府の出仕要請を跳ね除けたらしいんですが、上巻の中で「憲政の神様」と呼ばれている二人組が出てくるのでちょっと期待、だいたいこの作者さんの守備範囲が財界と実務寄りの政界みたいな感じだしね。
というか福沢門下って癖ある人多いなぁ、それ従わせてるんだから大したものですねw