「地下鉄誕生-早川徳次と五島慶太の攻防」交通新聞社新書61、中村建治

地下鉄誕生―早川徳次と五島慶太の攻防 (交通新聞社新書)
 

 

正直基本的にこの本、というよりこの展開は早川徳次に対するところの五島慶太、という内容に集約されがちだと思うんですが(都市交通そのものの発展に尽力しようとした人と商業主義の権化との対立)、ただ、今から遡って「品川」対「渋谷」と考えるとそこまで遜色はないのでちょっと話がわかりにくいと思うんだよね。
というより、渋谷に地下鉄を通すのがどうしてそこまで悪いのか、単に利用されるのが癪に障るのかって読めてしまうような気すらしないでもない。

その辺は基本的に私が渋谷区在住なんですが、渋谷駅には本当に当時なにもなかった、駅ビルくらいしか計画されていなかった、渋谷駅に隣接したところに車両基地や工場があった、発展したと言われているのは戦後のオリンピックの前だった、と聞いているということを掛け合わせるとわかるんじゃないのかなぁ。
要するに、都市交通の発展のために江戸時代からの要所である街道系の品川に地下鉄を通そうとした計画が「ただの野原」でしかない渋谷の発展を促進するための一か八かの計画へと挿げ替えられてしまった、という内容になるんだよね、だいぶ違う。
そこさえ押さえておけば、全体的な事態そのものはこの本でも他でもきちんと押さえてると思うんだけど、なんというかなんともなぁ…。
(この辺は私がたまたま鉄道以前に渋谷区に在住していたから知ってましたが、鉄道系じゃないとそんなに知られてないことでもないんだよね、でも鉄道系でここをちゃんと踏まえてるのって見たことないんだよなぁ。)
しかし、五島慶太のその計画が別にその後の東京に悪影響だったか、というとそれもそうでもないよね、周辺地域の発展の一モデルになった。歴史の読み方ってややこしい。