「プロジェクト鹿鳴館! -社交ダンスが日本を救う」鹿島茂

 

鹿鳴館そのものの名前は聞いたことがあっても(まあ要するに迎賓館、国内の士族家族の交流の場として誂えられたそうですが)、それがどんな歴史を辿って、どんなふうに受け止められていたのか、というのはだいたい断片的ではないかと思うんですが。
近代史を広く扱ってるこの著者さんならいいだろう、と手に取ったのがこの本。
まあ、実際には現代に「鹿鳴館を蘇らせよう!」というコンセプトの元に社交の会(ダンスメインの場はすでにあるらしいんだけどね)を開く、という計画の話なんですが、これがなかなか馬鹿にしたものではなくて、日本人がそもそもどうして社交が苦手なのかダンスというものがどのような作用をするのか、という部分が語られていてなかなかお見事。
正直なところ、合コンやネットでの出会い系って性交渉に直結してるから、そもそもそこが目的の人以外はあんまり馴染めないって部分は仕方ないよなぁ。
下心があっても、それをきちんとダンスという言い訳の元に押し込めるべき、というのは多分これ、女にとってはすごく受け入れやすい感覚だと思います。実際本の中でも女性陣はほぼ歓迎の様相だったしね、男性側の気持ちはちょっと私ではわからないかな。

この鹿鳴館の存在を岩倉使節団から語り、不平等条約の撤廃のための働き掛け、とのみ完結しているのがよくある歴史語りなんですが、それだと国内の位置のようなものがよくわからない、猿真似だった、と嘲ってる描写すら「欧米人」の視点だよな…。
それを井上馨の妻子を伴った洋行から語り始め、その妻子に風俗を学んで貰おう、と目論んで成功を納めていたこと、社交の場、ダンスのもたらす教育効果のようなものを感じ取っていたことまで含めると、猿真似って笑われたことに同調したくはないかなぁ。
女が主役であるがゆえ、男に大きな役目があるダンスって、そういう視点は好きだな。