「謎多き神 八幡様のすべて」田中恆清

昔、熊野古道に興味を持ったことがあって熊野信仰の本に軽い気持ちで(自分の能力のようなものを過信して)、手を伸ばし、ものすごい勢いで討ち死にしたことがないでもないんですが、この本を読みながら思い出していたというか、ちょっと似てる。
ただ、こちらの岩清水八幡宮は前後の辻褄のような部分は完璧なんですよね。
ぽつぽつエピソードに引っ掛かることがあっても、神功皇后の行動がいつどうなって、それがどのような歴史に連動しているのか、という部分までもよくわかる。
(息子がメインって言われても、私この方以外重要に思えないんだよなぁ…。)
とはいえ、それだけだと「日本に一番多い」とまで言われる規模の広がりがなぜかがわからないし、現世信仰ですらないんだよね、八幡信仰。勝手に庶民が広めた稲荷神社とはまた別の文脈で広がっているとしか思えない、天皇上皇法皇の来訪がかなりの数ある、しかも繰り返し繰り返し来る人も定期的にいる、鎌倉幕府江戸幕府の公的な庇護を受けているなどという意味がよくわからなくなるんだよね(まあ江戸は鎌倉贔屓だから間接的事情なのかもしれないけど、八幡神社以外は許可ないと駄目とまで聞かされるとなぁ)。

もともとこの岩清水八幡宮の土地に弥勒寺があったこと、放生会という仏教伝来の行事を唯一行う、神仏習合の代表格のような存在であることも、歴史的に見て否定しようがないんですが、明治の頃に行われた廃仏毀釈によって一旦完全に否定されてしまったようで。
なんかよく来歴がわからないどう見ても国宝級の刀は出てくるし、本来なら職人が名前を刻むことなんてない時代のはずなのに銘があるとか、結構素で面白い内容だったんですが40年に一回くらいのペースで「遷宮」が行われてたんなら今までの宮司さんたちは口をつぐんでたってことだよねぇ、歴史ってなんか、侮れないよなぁw