「秩禄処分-明治維新と武士のリストラ」落合弘樹

秩禄処分―明治維新と武士のリストラ (中公新書)

秩禄処分―明治維新と武士のリストラ (中公新書)

 

 もともと金融史や鉄道などでも名前が出てくる秩禄公債と金禄公債というもののことが知りたくて手に取ったんですが、まあうーん、士族身分がこの時期をどう乗り切ったか、というか、この時期にどうしていたのかってのが主だったかなあ。
今まで釈然としなかった明治6年の征韓論争は、西郷隆盛が即時開戦を望んでいたわけがない、という結論になっていたんですが、そうですね、士族の側から見たこの本が今までで一番説得力がありました、どう見ても即時に開戦に至れるだけの軍備がないww
(これ、政府関係者には当たり前のことだったんだろうなぁ、と思うよ正直。)
別の本ですが、その後の台湾征伐は「朝鮮半島よりも危険度は少ないし、清との関係もなんとかなりそうだし」ということで断行されたものの、船なくて兵が運べなかったみたいなことになっていたということを聞いたこともありますので、なんかよくわかるね!
明治6年には井上馨やその関係者も下野してたんですがなんだこれ、征韓論争とまた別のむしろ秩禄処分に関してのことだったのか、ということと、大蔵省と民部省との争いってやっぱりそれ中心に扱ってる文章じゃないとわからない気もしてきた。
この著者さんは専門じゃないから仕方ないんですが、いつの間に内務省出来たの(民部省が大蔵省から再分離してここに吸収されていたとか)、大蔵省の権限を制限した正院ってなにとか、まだまだわからないこといっぱいありました。

この時期に士族身分の中から破産した者はたくさん出たものの、それは他のどの階層でも同じだったということ、誇張されている可能性もあること。これだけの特権身分の開放がほとんど無血で行われたことは過去にない、ということ。
個人的に西南戦争までこの関係と思うんですが、転覆しなかったから政府の勝ちかな。