「伊勢神宮の謎を解く-アマテラスと天皇の「発明」」武澤秀一

伊勢神宮の謎を解く アマテラスと天皇の「発明」 (ちくま新書)

伊勢神宮の謎を解く アマテラスと天皇の「発明」 (ちくま新書)

 

 

まあすごく大雑把に「古来から連綿と同じ形式で続いている伊勢神宮式年遷宮」は実際のところ明治22年の時点で事情が許す限りなるべく復古の形で! というところから始まったここ100年ほどの習慣なんだよ、というのが主題の本だったと思うのですが。
そこまでは別に疑う余地とかないんですよね、解釈違いとかもなく、なにしろその前後に実際に(きちんと正規の依頼によって)研究した方の研究書が残っているそうなのでw
明治の時点ではなにしろ大政奉還のあとの始めての政治パフォーマンスで、翌年の明治23年に明治憲法の発布を控えていた、という時期で(これがそもそも連動した出来事だったのではないか、というのは初めて見た説ですが、確かにそう考えたほうが自然かも)、とにかく古来から続いているということで他からの意見を封じるためにそうするしかなかったのではないか、という流れになっていたんですが。

現代人は別にそんなもの信じなくてもいいんじゃないかな、というのが著者さんの言いたいことだったんじゃないのかなぁ、そもそも本当にこの明治中期の時点で未来永劫「古来からの式年遷宮」を信じさせたいのなら資料を処分してしまえば良かったわけだし。
それどころか詳細な研究まで行われてるってのは、なるべく古い形を復原したかった、ということもあるんでしょうが、やっぱりそれだけでもなかったんじゃないのかなぁ。
その時点ではそう言い切って、権威を高めることが目的であっても、それでも調査は行い資料はきちんと残しておく、というのは正直理性が感じられて私は好きかも。
そもそも伊勢神宮の神格化は持統天皇が孫に天皇位を与えるために、というのは『古事記』『日本書紀』絡みでもよく見掛ける話なんですが、この本の説明が一番わかりやすかったなぁ。そしてやっぱり、そこも含めて嫌いじゃないかも、清濁併せ呑んだ感じで。