「日本政治思想史-十七~十九世紀」渡辺浩

よくよく見てみたら第1章(その前に序章がありますが)の時点で儒教という単語が出ているのにそれをすっ飛ばしていたのか存在に気付かず、江戸の儒教学者を読んでいる中でなにがどれだか全然わからない、というか、それぞれの理論なんて別にいいよ、というような感慨を抱いていたんですが、儒学の本だったということを他の方のレビューで知って大変申し訳ありませんでした…以外の言葉が出てこない体たらくなんですが。
面白かったのが地位と家、家と土地が結び付いているので簡単には解体することが出来ず、士農工商という身分で考えれば農民にも商人にも町人にも才覚があればそれぞれなんらかの形での栄達の仕組みがあったにも関わらず、武士だけが事実上武力を持つことも出来ないままに放置されていた、という現実で、そういう前提に立てば案外「明治維新の世」が来た時に一番喜んだのは彼らだったろうね、という言われ方も納得するものはあるんですよね、というより、現実の流れをそう捉えたほうが理解しやすいものも多い。
で、それがまたなんでそういう構造になったのかといえば、徳川幕府儒学を政治統治の方法論として取り入れたからだよね、と言われるのも納得。
そして刀や鉄砲は、確かに常時携帯していることは武士階級にしか許されていなかったものの、農民なんかも必要なことがあれば使うために持ってたんだよね、ということが語られていまして、だからこそあれか、武士が刀を常に帯刀しなくなるという時点で(それ以外の階級も武器自体は持っているという前提があるゆえに)、特権階級ではなくなるという大前提が成立するわけですか、いろいろわかりやすいなぁ…。

 

と、本当にいろいろ面白かったんですが儒教内部の派閥争いや微妙な学説の違いは、その興味と完全に乖離してて、ちょっと残念。政治と儒教という切り口で読みたかったかも。