「近代日本と鉄道史の展開」鉄道史叢書9、宇田正

わりと目新しい内容は多かったものの、微妙にテーマが散逸しており、それと「エートス」「ビヘイビア」(性質と振る舞い程度の意味かなぁ?)という言葉が多様されるような文章には到底見えず、なんでこの言葉が使われてるんだろう、としばし悩むようなことがあったんですがもしかして同じ根っこの出来事だったんだろうか。
なんというか、言葉ってそれに相応しい文体や必要性があるよね…。

全体的に明治初期からの鉄道を事実上担っていた井上勝氏に関しての言及が多く、その時代の工部省(メインの仕事は鉄道だと思われます)と私鉄の関係のような章は複数、そういや今の南海鉄道である阪堺鉄道の出発点が官営の釜石鉱山の専用鉄道や資材の払い下げってのは始めて聞いたなぁ…。私も確かに阪堺鉄道が「最初の私鉄の一つ」とは聞いたことがありますが、私が聞いた時点では私鉄として現存だから、というニュアンスになっていたので著者さんの反論が認められたのかなw
(日本鉄道がほぼ国営鉄道に等しかったって言ったらそれは単なる事実だけども、阪堺鉄道も最初は払い下げだろうみたいな言い分でしたが。)
てか、最後のまとめ辺りに触れられてた前島密の『鉄道憶測』に関して触れられてなかったんですが他に論文があるのかしら。私鉄派だった経済学者の田口卯吉も、柳田国男との対比としてしか出てこなかったから他に論があるものは避けてたのかもなぁ。
鉄道敷設法(明治25年)が出来て以降の島根、岩手、滋賀、大阪商法会議所の江越間鉄道(大雑把に南北幹線みたいな構想)、笠岡-井原間というのはこれは山陰地方かな、などの反応などがそれぞれ語られてましたが、まあまだちょっと具体性には乏しい。
私鉄乱立時代の前時期という意味はあると思うんですが、地域史から読みたいかな…。