「株式会社の世紀-証券市場の120年」小林和子

前に証券市場ではまず鉄道株が主に最初に扱われたものの私鉄の国有化(明治末)によって大きく流れを変えた、と聞いたことがあるんですが、そちらは野田正穂氏辺りに任せたほうがいいかな。ただそれ以前の「東京株式市場」までの流れはこの本のほうがわかりやすい、というか、米取引所が株取り引きを担ったことが認識出来てないと多分流れ全てがわかりにくいw
どうも江戸の頃からあった米相場取引が先行してしまい、有価証券に関してもそちらで扱っていたようです、実際に米取引所と一緒になってるという表現されてます。
あと、初期の銘柄はほぼ銀行株や株式取引所、それこそ米取引所に限られていて、幕末の動乱の収束のために発行された新旧公債(藩財政の明治政府の肩代わり分)や秩禄公債(士族身分への失業保険)などくらいしかなかったみたいです。
というより、当時は大きな資本金を必要とする産業がまだ未発達で、あくまでも家庭内工業の発展系のようなもので済んでいたってのも証券市場が発達しなかったってことと関わってくるんでしょうね。
てか、今の時点で金融史で触れられてるのを見たことはないんですが、米相場などの江戸の頃からの相場師も思ったより明治の世に多く生き残ってそうだよなぁこれ。
その後、仕組みの上では分離はされるようなんですが、長い間商品相場と有価証券が一緒に扱われていたみたいです。この辺も誰か研究してる人いるのかしら。

そこは良かったんですが、戦中戦後の時代はちょっと今の私だと駆け足で、もともと明確な制度変革を語るのが得意な著者さんじゃないかって気がするので残念かな。大雑把に証券市場への外部介入が語られていたんですが、まあ明治の文脈とは別物だよなぁこれ。