「日本貿易入門」松井清

1962年、戦後17年目の刊行(一応高度経済成長期に含まれてるのかなぁ、自由化に関しての話はすでにされていますね)、個人的に欲しかったのは明治初期の貿易の歴史だったんですが、明治初期の頃の低廉な賃金によって支えられた日本の輸出産業、という構図が、この時期にも依然として続いたと言われてしまうとちょっと唖然。
どうもこの頃に「インドよりも低い賃金」という言い回しが存在していたようなんですが、それを唱えた方の計算が正確とは言えない、と言いながら著者さんが計算し直して「否定しきれない…」という結論になっていたほうがよっぽどショックだったんだけどww
日本の紡績業の生産性はトータルで見るとそれほど悪くはないものの、それは大企業による工業生産が生産性が高く、賃金も高く、けれど日本の輸出に関しては中小企業が主に担い、その生産性は低く、あくまで人件費の安さによって競争力を高めている、と語られていたんですが、うーん、それがインドよりも低廉に押さえられた賃金になっていたのか。
まあこのあとに工業化の時代が来るのであろうものの、産業によっては人件費の低さが今になっても構造として存在してるんじゃないかと思うとちょっと不安になるなぁ。

そもそも日本はこの頃までにほとんど入超(輸入のほうが多い)しか経験したことがないらしく、出超だったのは明治の時代になって初期の怒涛のような外国産業の取り込みをしたしばらくあとの時代くらいだった、と語られていて意外だったんですが。
輸入に頼らざるを得ない時期が非常に長く、そのために輸出をしての外貨稼ぎをする必要があり、そのための低賃金の構造も受け入れざるを得なかったってことなのかなぁ。
昭和初期の金解禁(信用経済への回帰、為替自由化)の再禁止に関してダンピング経済と非難を受けていたってことも、もうちょっと把握してたかったな、心もとない。