「東京市政-首都の近現代史」源川真希

初期の東京府のインフラを司った市区改正事業ってのは今まで話は聞いていたものの、中央政権が作っていた「官庁集中計画」と対立したために一旦頓挫していた、という経緯は初めて聞いたんですが、この計画が井上馨を中心人物としていたために外相である彼が不平等条約改正失敗のために辞職。
で、その隙を縫うように山形有朋、松方正義の手によって半ば強引に「市区改正事業」が復活した、という全ての流れに関して聞いたのは初めてですね。確かに東京市政のことだけ追ってたらこの辺の事情はよくわからないだろうなぁ…。
この市区改正事業に括られているのが大正9年までで道路はそこそこ実現したものの、次に手掛けた上水道事業で疑獄事件が出たってのは他所でも時々聞く話だなぁ。
(この本では語られていなかったんだけど、東京市電はどういう位置になるんだろうね、道路に関しては東京馬車鉄道と東京市がごたごたと舗装の有無で揉めてたんだw)
で、大正10年になると最近たまに話を聞くことがある後藤新平が登場し、東京市長として都市計画を作り、この計画が大正13年の関東大震災のあとの復興計画として利用された、というのは地味に知られてますね、関東大震災より先行してるんだよね。
そもそもこの段階までに東京府東京市となって、もともとの市街区の外側に6郡を増やし、さらに三多摩が神奈川県から移管され、さらに特別行政地域として自治権がなかったところに自治運動があって東京市長が選考されるようになる、という流れがあるんだよね。

この後の東京市議会の疑獄事件が続く市議の利権構造、政党同士のぶつかり合いや戦争に至るまでの話、その後の戦後のイデオロギーのぶつかり合いもあるものの、まあ、東京市の形成に関してのほうが精度上だったかな、インフラと政治の結び付きが面白い本でした。