「天下の雨敬、明治を拓く-鉄道王 雨宮敬次郎伝」江宮隆之

この人、そもそも投機家筋で甲州財閥の若尾系に続く存在感で(甲州財閥あんまり足並みそろってないけどね)、甲武鉄道やそれに連なる「中央本線」に関わった、みたいなことになるのかな、いろいろ小さな仕事はしてるんですけどね。
もともとは横浜の貿易に噛んでいてそこから出て来た中の一人っぽい。
甲州財閥の他の面子とあまり関わっていないことは知っていたんですが、「糸平」とか五代友厚とか伊藤博文とか安田財閥とか、人生を通しての事業パートナーがいたわけでもなさそうだな、事業が駄目になった時に頼った縁が切れてしまう、とか、政商になりたくないとか、時々口にしているんですが、実際そんな感じの立ち位置かも。

今まで読んだことのない作者さんだったんですが、あくまで小説として評価した場合は今までで一番良かったかもしれないです。なんというか、今まで読んだことのある近代小説だとどうしても自分の知識を突っ込むせいなのか、情報レベルの高い小説だと登場人物の思考が現代っぽいっていうか…説明調になりすぎるんですよね。
ここまで冷静に情勢を捉えてるのに投機での失敗が続くと正直説得力が。
仕方ないっちゃあ仕方ないんですが、だったら小説ではなくて通俗的な新書レベル(引用がない、論文形式ではない)の伝記として読みますよ正直、伝記じゃなくてテーマ単位のほうがわかりやすい本が多いしな。
が、この本だと情報ないー、訪米したらなんか周囲が全然違って見える! とか、今後どうしたらいいかわからないからとりあえず手探りとか、それが本当に当時のままかはともかく、感情移入しやすいんですよね。近代の本他にも書いて欲しいなぁ。
水道管の納入事件はあれは技術力が足りなかったと思うけどw 善意の人でいいよね。