「植物の魔術」ジャック・ブロス

古いフランス人の作家が(つまり植物学の門外漢)、どうも読んでいる限りでは植物学そのものが変化している時代に、「ちょっと科学的なことに興味のある素人」であるところの読者に向けて書かれたのだろう本で、ものすごく正直なところを言えばナショナル・ジオグラフィックなどの番組を見ているとよく見るような内容も多く、この本そのものに新味を感じることはあんまりなかったんですが、要するにかつてのナショナル・ジオグラフィックの番組みたいな立ち位置の本だったんじゃないのかなぁ。
植物というものを捉えるのもあくまでも人間なので、どうしても思想が入るのだ、というのはいつどの時代であろうとも正しい指摘になるんじゃないでしょうか。
植物というものは一方的に動物に捕食されるためのものでしかなく、食虫植物が発見された時に植物学者を憤慨させたってのも、ある意味でなんらかの思想に近い気もするんだよなぁ。この食虫植物の仕組みがわかるまでの間に“食人植物”がいるのではないかと妄想されたってのも、多分「憤慨した」ってのと案外近い思い込みの結果なんだと思うんだよね。
実際のところは栄養ではなく、地中から窒素を得られない土地で窒素を補うためだということなので、それほどの量は必要としないようなんですが。

そもそも地球上では光合成を行う植物のみが自分でエネルギーを作り出すことが出来、動物の身体、関節部分は病気や弱った植物の部位に似ている、と聞くと今でもショックを受ける人はいるんじゃないでしょうか。
人間だけが唯一自分たちを生きる環境を自分の力で壊し尽くす能力を持つ、というのも、今はまあ当然の概念なんでしょうが、当時どうやって受け止められたんでしょうねw 「進化」ってのも、別に勝手にそう捉えただけだしなぁ。