「中世の天皇観」日本史リブレット022、河内祥輔

中世の天皇観 (日本史リブレット)

中世の天皇観 (日本史リブレット)

 

 

そもそも「万世一系」という言葉そのものが近代に出来たのだということは単純な事実なものの、その認識のもとになるものはすでに江戸時代に学問の一種として存在し、さらに言うと『神皇正統記』『愚管抄』へと辿り着く、というような内容。
で、個人的にあんまりこの万世一系って好きじゃないんですよね。
なんでかっていうと、ある程度以上歴史知ってる人なら見ればわかるんだけども、天皇位の系譜図ってのがかなりぐちゃぐちゃしてるので、なんというのか、信じ込んでる人は系譜図に興味がないのでは…? と考えてしまうんですよつい。
ところが『神皇正統記』の北畠親房氏の意見を見ているとどうもそうではないらしく、まあ横道ににょーんと飛び出てったことは仕方ない、それに何世代か離れていることも意味があることだったんだ正当性があるのは、実際に天皇位が後々まで続いた血統なのだ、という論点で語っておられるらしく。
要するにそれ自体が絶対神聖ってわけでもないんだよな、正直。
で、実際に四世代の間を開けて即位した継体天皇に関して語られていたんですが、ほとんど伝説の存在(実在はしてるんだけども、みたいなぎりぎり時代だったような)である応仁天皇を祭った宇佐八幡宮の助けを借りてその正当性を保証し、その後、岩清水八幡宮として中央近くに呼ばれ、八幡宮天皇位への意見を許されたなんて話もあり。

単に神秘的な歴史と言われるといまいちなんですが、そうやって理屈を付けてでも権力争いをしない方向に尽力した歴史の積み重ねが万世一系だというのならば、評価出来ないわけでもないのかなぁ、とふと。
まあ何箇所か途切れてると思いますけどね、見るからに。それはそれでいいのか。