「三菱グループ」入門新書 時事問題解説26、今雄一

同じシリーズの『三井グループ』を読んでからこの本を読んだのですが、うーん、思った以上にだいぶ差が付いていたなぁ、というのが正直なところかなぁ。戦前は概ね同格というか、どのような角度で見るかで三井三菱のどちらが上かは解釈が別れてたんですけどね。
この三菱グループは金曜会という会合を持っているんですが、なにをするかというと寄付金のリスト回すくらい? みたいなことを内部の人が揶揄でもなく言っているらしく。
わりともっともらしく、この金曜会のトップがカリスマに溢れた人物なので今後その影響が強すぎて苦労するだろう、みたいなことが語られていたんですが、あれですね、寄付金の話くらいしかしない緩い拘束の会でそんな心配されても、というのが正直。
今後も増えることがあっても減ることはないというのももっともな話で、どちらかというと拘束がない、一応中核近い三菱銀行には融資先にグループにない業態を選ぶ、という判断くらいはあるようですが、戦後3分割された三菱重工業系がキャタピラー市場で真っ向対決して、さんざん争った挙げ句に特に合同の話そのものにはヒビ入ってないしなぁ。変な企業体質だよな三菱。

もともとこの体質は三菱財閥の4代目、当人が傍系である岩崎小弥太(初代弥太郎の弟の子、なぜ相続そっち行ったのかのほうが謎)の時代に、株式公開などを通じてそれほど強い支配力を持とうとしなかったところに直接の原因があるらしいんですが。
まあ、初代の頃からわりと組織が大事にされているような部分はあるよね。
地位ははっきりしているものの、下の人間が物を言ってそれが通るような地位が揺るがないからこその風通しの良さみたいな部分がある。戦争責任から解体指定を受けても反抗し、ぐだぐだしている間に世界情勢が変わり、もともと手付かずだった銀行を中核に作ったのが緩い拘束かぁ、深く考えて理論的にやってるわけではないのが不思議だよな、ここ。