「中世東大寺の組織と経営」永村眞

どちらかというとこの本は学閥、と表現するほうがいいのかなぁ? 東大寺の中にまず南都六宗という仏教の派がありまして、そこに空海真言宗最澄天台宗と加わって八宗、正直ここまでは聞いていたものの「九宗」と聞いてびっくりしたんですが、あ、禅宗か、東大寺って禅宗もあったんだww という驚きってどの程度通じるんでしょうね。
まあ、この派ってのは正直学派に近いものであって、寺の割り振りとしてはあまり機能的なものではないものの、どこに属すのかはそれなりに重要だし、そこから移動するには多少の苦労もある、みたいなものらしいですね。
友人は大学のゼミって言ってたけど、そんな表現が妥当かも、もう少し大きな括りとして学部がありますが、これほど絶対的なものでもないというか。
で、その派がそれぞれの院を形勢しているとかその趨勢がどうとか、まあ、うん、あんまり面白い内容ではなかったんですが正直。
よくある教えの内容とか、その違いとかよりは読みにくくはなかったですよ、あくまでも人の流れみたいな話だしね、ただ面白いかと言われると難しいね!

その中でわりとはっきりと面白かったのが備前国の池田荘と連動していたという油倉という組織の存在で、そもそもこの本の中で語られていた「大勧進」というのは普通の地位ではなくてあくまでも東大寺炎上ののちの復興のために作られたようなんですが、東大寺の内部人事ではこの役がこなせなかったらしくて、油倉から大勧進職に着いていたらしいとか、そこに工人が属していたらしいとか言われている。
これが産鉄や焼き物などで名の知られた備前が中心となると、なんかちょっと意味深だよなぁ、ここもう少し踏み込んで読みたいんだけど研究あるかな?