「明治外交官物語-鹿鳴館の時代」犬塚孝明

結局この本の中でずっと悲願となっていた関税自主権(まあ治外法権は地位が同等になればそこまで問題でもなくなるんだ自然に、初期には一番揉めるけども)の撤廃はこのあとの時代に成功ということになるんですが、だからってその時代にだけ原因があるというより、試行錯誤があってこそだよね、というスタンスに賛成。
明治初期というと井上馨とか森有礼なんかがだいたい主要な名前なのかな。
赴任地のフランスで鄭重に葬儀が取り行われたという寺島宗則なんかはまだ若かったようですが、ほとんど手探りの状態だと信頼関係があるだけでも大したものだったんだよね。

井上馨というと鹿鳴館時代と言われるような、後世にはちょっと猿真似と言われているような舞踏会やドレスや洋服の着用を義務付けた人物なんですが。あと森有礼は明治3年からの岩倉具視使節団でこの時点での不平等条約の撤廃を提言したってことで一時権力者からも睨まれていたとかまあいろいろあるんですが。
どっちかというと洋行派のわりと実情を知っているところが国内の人間と合わなかった面もあったんじゃないのかなぁ、という気もしないでもないな。
なんというかあれなんですよね、国力に極端な開きがある弱い国なら弱い国で世論を背景に条約改定をするっていう方法論もあると思うんですが(森有礼が言ってたのは今なら庶民が味方するよ、みたいな意味だと思うんだよね傍目に)。
そういう機微を全く考えずに対等の存在として扱え的な態度を見ていたら、ああうん、なんだ、上手いこと表現出来ないんですが、「確かに対等に扱われなくても無理はないな」と正直今となると考えてしまうんだよな。
それでもちょっとずつ進展していき、まあ条約改定はこの本のあとの時代なんですが。