「「かぶき」の時代-近世初期風俗画の世界」季刊論叢日本文化5、守屋毅

少し前にこの本を念頭に置いてこの直前の時代を書いていた本(>「落日の豊臣政権-秀吉の憂鬱、不穏な京都」河内将芳)を読んだのですが、要するにあれか、豊臣秀吉の死んだ少しあとくらいの時代で、それとどういうわけか昔読んだ全く別の本を思い出してしまったんですが第一次大戦と第二次大戦の間にフランスに存在したという「ベル・エポック(最良の時代)」。
時代を考えると最良のわけがないんですが、権力の隙間のように庶民文化が花開いた時代とされていて、なんとなく少しそれに似ている。
日本のこの時代は、まあ、その後、近世の江戸幕府という長い平穏の時代を迎えるし、その時代のほうがよっぽど文化爛熟の傾向はあるのですけれどもね。
お国歌舞伎、女歌舞伎ってのはあんまり意識したことがなかったんですが、こんな時代の、近世の少し前の時代の話だったんだなぁ、だとか。
歌舞伎ならぬ「かぶき」いわゆるかつてのバサラも、この時代がほとんど最後の輝きであって、けれど無意味に死んでいった、あまり歓迎されていなかったような節もあり、けれど時代の接近した歌舞伎の中に、多少の痕跡を残していったような気配もある。
ただその痕跡すら、じきに「優男」の俳優に取り替えられてしまうわけですが。

で、実際に描こうとしたのは民衆の姿、それも京都の姿。
じきにじわじわと江戸が作られていくわけですけれども、この時代だと圧倒的に人がいたのは京都だろうしねぇ、けれど庶民の記録なんて滅多にないよねぇ、というのももっともな話、今読んでも面白いと思うのですが、出来れば文字資料ではない別の研究アプローチと誰か組み合わせてくれないかな、宗教とか町並みとか、きっと面白いよな。