「カーテン」エルキュール・ポアロ33、アガサ・クリスティ

カーテン (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

カーテン (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

 

 

比較的早い時期にすでに書かれていたという「ポアロ最後の事件」、その後何度かクリスティ女史も最後の事件を書いたこともあったそうなんですが、結局これが本当の最後の事件ということになったようで、なんだろう、ちょっと不思議な話。なんというかヘイスティングス氏が呼び出された時点でまだなんにも起こってないんだよね。

ポアロ氏いわく、Xという人物がいて、彼の行くところには殺人事件が起こり、彼らが今暮らすスタイルズ荘にそのXがいて、そこには唯一ヘイスティングス氏との折り合いが良くない娘さんとその雇い主である医者夫婦がいる、みたいなところから始まり。

誰が殺されるのか見当を付けて欲しい、ということで呼び出されたのがヘイスティングス氏なんですが、これ、よく考えたら本当はそんな必要がなかったことがかなりあとになって判明することになり、しかしだったらこの話は全て、どういう意味だったのか、ということを考えてしまうと、かなり複雑な話になってしまうような気もするんだよなぁ。

そもそも私、昔から不思議だったんですが、ヘイスティングスさんってポアロさんにとってどういう存在なんでしょうね、非常に大事にしていることはわかるものの、その中身がいまいちわからない、というかピンと来ない。

ただ、この話を見ているとXは実はポアロに似ていて、もしかしたらポアロベルギーから亡命して来たあと、イギリスに落ち着くまでの間、なにかボタンを掛け違えていたらあるいは「ああ」なっていた可能性もあるんじゃないかと思ってしまうんですが、どうなんだろう、ポアロさんもよく他人を操るんだよね、主に男女の仲を取り持つ方向ですが。

 

他人の幸福を心から望むことが出来るようになったのがあるいはヘイスティングスさんのせいで、だからこそ、こんな最後の幕の締め方だったんだろうかってのは、妄想かな。