「農業起源をたずねる旅−ニジェールからナイルへ」中尾佐助

正直言って専門分野の記述も、いささか大胆な仮説も素晴らしかったとは思うんですが、人種民族に関しての分類にところどころ首を傾げ、そもそもこの地、サハラ砂漠の遊牧民って対政府の内戦に巻き込まれて家財道具も財産である家畜も失っているのに「生活レベルが低い」もなにもないというか、一体なにを勘違いしているんだろう? と思っていたら、“焼畑農法”についての言及があり。
「なぜか熱帯の森林は再生しない」という内容が語られていたので、さすがにこりゃおかしい、と思って調べてみたら1969年の本の出版しなおし、ということで納得。
土壌が日光に晒されることによって酸化する、というのがその理由なんですが、今はちょっと興味がある、という程度の人なら聞くことがあるようなレベルかと(私が見たのも海外の自然番組でしたし)。


とはいえ、肝心の作物部分に関してはあまり省みられることのないアフリカの地を実際に自分で巡り、先行研究の少なさを嘆きながら、自分の目にしたことだけを記述(専門分野以外が実に惜しいです、言及の必要もないし...orz)しておられ。
実際にこの地の作物っていろんな条件に強いもの多いし、有効だと思うんですが。
中でもトーシンビエはとうもろこしの一種で地上の作物の中でもっとも乾燥に強く、葉は家畜の飼料になり。ここ数年ですっかり美容製品として有名になったシア・バター(現地では主に食用)、それよりも加工が簡単な油やし、スイカに近い種(苦い)も原産し。
イネの仲間もどうもこの地の出身、基本的に栽培作物のルートとしては中東へというのが一番多いのですが、逆に中東やインドから、という逆行ルートも存在する模様。
もうちょっと研究進まないんでしょうか、面白そうなのに。