「科学者が読み解く日本建国史」中田力

まあ私にとっては全く価値のない本ではなかったものの(恣意がないって言っていたように少なくとも善意に基づかれて書かれているからだろうし、一番の論説のもとになっていた縄文人と弥生人との共存に関してはちゃんとした内容だったからだと思う)、正直言うとこの前の巻であったらしい同レーベル同著者氏の「日本古代史を科学する」1冊で済ませたかったような気もするし、今後読むのもちょっと躊躇われる、多分重複してるんだろうな。
大雑把に言うと日本に辿り着いたY遺伝子を元にしたハプロタイプという分類から見た時に中国のどの地域から来て、それら大陸では争っていたものの、日本では融和した形跡がある、と言われたら確かに記紀神話にしろ現在の考古学にしろ、否定するところはないんだよね、ただ、そこまではわかっているので実際に日本でどのように人の流れがあったのかの分析が聞きたかったし、どうもそれは混血が進んでわからなくなってしまっているということなので、正直なところ大変残念です、他の技術との組み合わせ待ちかなこれはw
要するに日本ではあまりそのハプロタイプでの分類が当時の情勢を再現するには役に立たないってことだけはわかりました、中国の王朝なんかだとだいぶ詳細にわかってるらしいので、まあむしろそちらに徹してくれてたら読みやすかったかもしれないなぁ。
でもあくまでも話の、日本への流れの枕だったのでいささか中途半端。

そして科学の使い方そのものはそれほど怪しげではないものの、『史記』をまず絶対とし(同時代ならそれでいいと思うよ確かに!)、白川学を信奉し、記紀に関わった人物の血統を有名な名称を次々へとつなぐことで鮮やかに解きほぐすみたいな展開になっていたので残念でしたとても、読み終わってから思ったけど白川学の裏付けを科学で試みるとかそういうことは…この人の守備範囲外だよね、ハプロタイプだけだとわかること少ないね?!