「エリゼ宮の食卓−その饗宴と美食外交」西川恵

大雑把にまあ、ワインの格付けにも縁がなく(格付けが存在する時点で「縁が遠い」)、料理の名前くらいは見たことがあるものの、その味だのワインとの相性だのはさっぱり、という人間にとっても面白かった、という時点で大したものだと思うんですが。
とりあえず、海峡を隔てた隣国、英国王室の(国家元首よりも通常格付けが上になるのが慣例だそうです、終身だってこともあるみたい)エリザベス2世に関しては、ワインどうの、シャンパンどうの、というより、“マリニー宮買い上げ”という事態で判断すべきような気がするのですが、その辺どうなんでしょうか。
ええもう、英国側が他人の持ち物に「泊まりたい」って要望出す時点でびっくりだ!


エリゼ宮というのは、まあフランス戦後のシャルル・ド・ゴール大統領以降、そうだなー、どちらかというと外交儀礼上の饗宴の場として機能し続けているらしく、ド・ゴール氏の次の代くらいからメニューにも大統領の意向が反映され、奥さんは参加することもあればしないこともある、という大統領ごとの特色が強く出るところらしく。
ミッテラン大統領とシラク大統領への移行が面白かったかなー、やっぱり。
トータルで印象が強かったのが、ロシアとのパイプも維持し、欧州各国ともアメリカのブッシュ大統領(親)とも協調路線を取ったミッテラン大統領でしょうか、いや、お国の生活の本を読んだ時は常に黒いの噂が付きまとった、という表現をされていたんですが、どちらにしたところで精力的な人(そして一筋縄ではいかない)だなぁとしみじみ。
苦労する席順の話、経費無制限の材料費、大イベントの年代に合わせて用意される大量のワイン、や、大統領の外交に同行する料理団(他の国は大使館が受け持つそうです)、美食の国としての自負には疎いものの、さすがにここまでやると天晴れだなぁ、うん。