「図説 浮世絵 義経物語」藤原千恵子

正直なところこうやって歴史順に並べられてその中でも特に力作が厳選されて、絵そのものの解説と歴史語りがあると非常にわかりやすい本だとは思うんですが(これが入門書でいいんじゃないかな、というレベルですね、丸ごと展覧会にしても良さそうだなぁ)、昔の人、というか江戸の人たちはこの戦記の浮世絵をどうやって受け取っていたのかなぁというのがちょっと不思議かも、複数の作者で描かれていたということは、平家物語の中の例えば一の谷の合戦の浮世絵の新作が出たぞ! みたいに受け手がきちんとつないで行くのか。
ちょっと詳細はわからないんですがそれはなんか現代の部分部分の創作がばらばらの作り手によって行われるインターネットの素人創作みたいだなぁ、とw
作品レベルや絶対数なんかは違うんですが、ちょっとスタイルとしては似てるかも。
というか私はこの本を『平家物語』の中の一部分として受け取ったんですが(いや吉川英治版を読んだことがあったので)、編者さんは「義経物語」として構成してるんですが、実際に江戸では義経にまつわる物語として受け止められていたのかなぁやっぱり。

まず源氏が負けて追い立てられて、平氏の支配が強まって、源氏が盛り返しまず木曽義仲巴御前の登場があって、そこからバトンタッチするように(まあ実際には内輪揉めしたわけだけど)、源義経が登場して圧倒的な戦上手として戦勝を重ね。
けれど兄・頼朝との諍いでまた崩れるように東に東へと逃げていって、死に絶える、というだけの話で、まあ歴史的な意義だとこのあとが鎌倉幕府…、と考えてしまうんですが、あんまりそういうのはどうでも良かったのかなぁ、やっぱり。
どこでどのような戦いがあって、どう勝ってどうぎりぎりで切り抜けて、どうやって若い身で死んだのかまでを何人もの絵師がひたすら書いたのかな。娯楽ってそういうものか。