「僧侶と海商たちの東シナ海」選書日本中世史4、榎本渉

中国(というより主に唐や宋)に渡った僧侶というとまず空海最澄が出てきて、その前に中国から鑑真上人が来ていて、多分他にもそれなりにたくさんいるはずだけれども、その全体像と言われるとよくわからない、というのがだいたい今の平均的知識かな?
私は個人的には平安末期から鎌倉の初期くらいまでの間に南都襲撃による東大寺興福寺の修復に関わった重源や栄西などが入宋していた、という程度のことは聞いているものの、その渡航経緯もよくわからず、この本を読むちょっと前に平清盛が僧侶を何人か宋に送っていたよ、という形で初めて読めたんですがその記述もそこ止まり。
この本は日本に存在する教えには限りがあるのでわりといつの時代にも大陸に渡りたがる僧侶は存在していたはずだが、その資金的な後ろ盾を得るには並大抵でもなく、やっぱりなんだかんだと正規の許可を得てから渡航しようとしていたんじゃないのかな、というのが大雑把なアウトライン。
とはいえ、渡航そのものが自由な時代には記録に残らない範囲で行き来もあったろうし、渡航が自由ではない政治的緊張のある時代もありましたよ、というような形での通史となっていまして。
この本がなにかというとやっぱり東シナ海メインという著者さんが言っていた通りの内容なのではないのかなぁ。
本に関して、海商よりも僧侶に関しての比重が多いのではないかという指摘をされていたのも見たのですが、海商の記録が継続的に残っていることはなかなか期待出来ないしね!
 
あとどの辺から資料が出てくるんでしょうか、大宰府はどのルートの貿易でも噛んでるらしいので、もうちょっとなんとか出てくるのかなぁ、いろいろ歴史は悩ましい。