『美の巨人たち』フェルメール「恋文」(オランダ)

フェルメール−Wikipedia
(1632.10/31−1675.12/15)


恋文が思いもかけぬところから来て驚く女主人と、それを少しばかり皮肉な、けれど愛情の篭もった目で眺める召使い女、というちょっとドラマのありそうな小さな作品。
女主人の手には楽器、部屋の壁には印象深い絵が二枚。
フェルメールというと、≪青いターバンの少女≫はともかくも。
≪牛乳を注ぐ女≫はどこがいいものやら、いや「いいもの」だというところまではわかるんですよ。しかしこう、それを口で説明しようとすると途方にくれるというか、なにがどうなのかが表現できないというかなんというか(先の少女にしたところで美少女だよねっ、くらいのことしか言えなくもないのかもしれず)。んで、それなりに多数の人と共有できる感覚なのではないのかとも思うんですよね。


オランダの小さな都市で生まれ、三度引っ越しはしたものの、同じ広場が同じ方向から見えるほんの百メートル範囲から外れようとせず。扱うテーマは壮大とは程遠い身近なものばかり、という画家さんなのだそうですよ。
なんでこの人生で“謎が多い”んだかそっちのほうがよっぽど謎だよな。
画材にはどうも手紙が多かったらしく、この回の≪恋文≫もその一つ。郵便制度が飛躍的に発展し、遠方への手紙が、庶民にとっても可能になった、ということで要するに時代の最先端“技術”。思いもかけないところから思いもかけない手紙が来ることもある、というのは当時の人にとってはかなりの驚きだったのだとか、素朴だなぁ。