「歳三往きてまた」秋山香乃

歳三 往きてまた (文春文庫)

歳三 往きてまた (文春文庫)

 

 

人が勧められていたのを見たので3部作の3冊めだったのを知らずに手に取ってしまったんですが(ひょっとしてもう1冊続いてたのかな?)、さすがに本が始まってすぐに病気で戦線を離脱してしまい、そのまま死んだ沖田総司や、近藤勇などに関してはちょっと前知識がないと面倒だったかもしれいなものの、新撰組は正直特に興味がなくてもなんとなく展開を知っているので、そこまで問題はなかったかも。
多分なんですがそれも案外、これだけ転戦していたことが理由だったからかもしれないよね、さすがにこれだけ広い地域に関係者がいたら全部の口は塞げない気もする。

まず上野での新政府軍との激突があって、地域はよくわからなかったものの篭城戦で城を取り損ねてしまって、会津へと転戦するも一旦は締め出され、若き前の藩主だけは戦い続ける決意をするもののどうしても全軍の本腰が入らないという状況を体験し、それからようやく合流した当時はほとんど唯一と言っていい戦力である海軍も歯が立たず函館まで逃げ延びたもののそこで命尽きる、というだけの話なんですが正直なところ。
まあでも、読んで良かったんじゃないかと思います、わりと純粋に面白かった。
うーん、前の2冊読もうかなぁ、ところどころで「土方歳三が優しくなった」という描写があるんですが、それ以前がだいぶ酷薄だったらしいことは確かになんとなくわかる。
で、優しくなるたびになんとなく色気みたいなものが増して行くようなんですが、そこを女性向けの小説かな、と表現するのもそんなに悪いものでもないと思うものの、あれは死に向かう色気って読むほうが良いかな、という気もします。
あとそもそも農民だった彼らがなんで大儀すら失って、本当に最後の最後まで戦うのか、それもなんとなくだけどわからないでもなかったかなぁ。