「ポリスの市民生活 生活の世界歴史3」太田秀通

まあ大雑把に古代ギリシャの生活は奴隷が支えてたんだよー、という本なのですが。
なんでもヨーロッパの学者たちは“民主制”の初めて実施された、一般市民に至るまで政治を語り、優れた文化を残したギリシャの都市(主にアテネのイメージですね)に奴隷制があった、ということを認めにくいみたいなんですが。
逆だよね、生活に余裕があったからこそそういうことが可能だったんだよね、となると高い文化度そのものが奴隷制に負っていたんだよ、とも言えるのかなぁと。
(あと古代ギリシャだと「子捨て」の制度もありますね、プラトンなどの著作で知られていて、人間というか人類の倫理観の変遷としてよく取り上げられています。)
そしてあと、フォローというわけでもないんですが、小規模な生産業、もしくは一家庭に一人二人の家事奴隷がいた、という状況は確かにそれほど非人道的な扱いを受けていたわけではなかったろうね、というのもやっぱり自然というか受け入れやすいよね。


この時代の「奴隷」というのは主に戦争の敗者、奴隷の子孫。
アテネの市民権は与えられなかったようですが(それは異民族も一緒ですね、この辺はローマとの対比で時々見掛けます)、主人との個人的な関係で開放奴隷というのはよく出たらしいですし、そもそも特殊な技術を持つために高い地位を与えられた奴隷もいたようで。
逆に異民族の王が奴隷になることも、ギリシャ人「同士」では奴隷にするのは止めようということをアテネ人が表明していたりすることもあり、ある意味で、奴隷の身分って誰にとってもそんなに縁遠いものでもなかったのかなぁ、という気も。
そして、都市アテネは戦争に勝ち続け、その優遇の身分を維持しようとし続けなければならない運命を背負い、、、結局高すぎる代償を払うことになったのかもなぁ。