「中世世界とは何か」ヨーロッパの中世1、佐藤彰一

まあまず“中世”という歴史区分にしてからが古代を決め近代を決め、時と場合によって近世を取り除いた残りの部分であるところからしてどうしてもその呼称自体で実情を伝えないという側面はあるのではないかと思うのですが(昔の畑だった東洋史を思い返しても近代くらいしかまともに使ったことないなぁ)(最近東西どちらもぽちぽちと見直しがされているところはありますね、まあ、教養といったレベルですが)。
そもそもヨーロッパの中世に至ってはかつて「暗黒の時代」とされていたそうで、どうも比較的最近まで真面目な研究対象ではなかったらしく、個人的な雑感ではここ20年くらいかなぁ? まあ、歴史学の進展そのものがちょっと遅いんですけどもw


で、この本はというと発刊からして去年末の(2008年)11月、全8巻の中世ヨーロッパのシリーズで、事実上の最新研究。
著者の佐藤氏が日本の中世の最初期の第一人者で(むしろ他に一人しか思い出せない;)、この本では過去のヨーロッパ中世研究の変遷そのものを語り、それを否定される、という立場であると同時に、ある意味で自分のやっていることすらも「過程」の一つとして捉え、いつか引っくり返されるだろうという前提があるのではないかなと。
学問そのものの変化というべきなのかもしれませんが、ちょっと興味深かったです。
彼が“ポスト・ローマ期”と呼ぶように提唱する中世初期/ローマ末期は、ローマ的秩序・文化の崩壊の中でキリスト教が一人なんとかそれを食い止めようとし。
次の権力の準備期間になっている、といったところでしょうか。
イスラム勢力の台頭と「ヨーロッパに蓋をした」オスマン帝国、という概念は非常に面白く、蓋をされたところから彼らの知的活動が始っていくわけなのか。