「笑う男」クルト・ヴァランダー・シリーズ4、ヘニング・マンケル

ヨーロッパ(スウェーデン)を拠点に、東南アジアを股に掛け、後ろ暗いところがあるのではないか、ということになるとむしろ日本人辺りのほうがその辺の事情にはピンと来るものなのかなぁ? 正直、この話のネタバラシはかなり後になってからされているんですが、正直個人的な感覚で言うと引っ張りすぎというか、え、なんでこんなにもったいぶったんだろうと考えてしまったんですが。
(ここで直接書いてもあんまり気にされないような気すらするんですよね;)


どちらかというと話の主題は、それ自体には特に不審なところもない自動車事故や、自殺や、それらを結ぶ薄ーい線や、それとともにヴァランダー刑事が思い出す、かつて絵描きの父親のところに絵の買い付けに来ていた男たちの感情のない笑みと。
その向こうに隠されているのだろう事実。
そして1作めの犯人は移民法の隙間を縫うように逃げ延び、2作めの犯人どころか組織の全貌どころか、どんなことがあったのか、ということすらまるでわからず。3作めでぶち切れたのか彼のしたことが暗殺を命令された側のアフリカ人を救うことで。
今度の話では同国人を向こうに回し、まるで疑わしいところも隙もない「容疑者」の家に違法すれすれ、というか完全にバレたら問題になるのだろう旧友のところで働く少女に潜入を依頼し、ある意味でさんざん危ない橋を渡って事態をなんとか解決した、という話にはやっぱりなんというか爽快感はなく(3作めは爽快感ありましたけどね! でも、ほとんどヴァランダーさん自身が崩壊寸前ではあったよ!!)。
多分、だんだんとスケールが大きくなっている、と表現するのが相応しいんでしょうが、あくまでヴァランダーさん等身大だよね、彼の義憤って普通に人間らしいよなぁ。