「灰とダイヤモンド(上」アンジェイェフスキ

ポーランドの戦後問題はまずそもそも「被害者であるのか/加害者であるのか」というところから逃れられないのだと聞いたことがあるのですが(すごく端的に言うと、ドイツ軍による占領がかなり早い時期に行われてしまった関係で第二次世界大戦のほとんどをドイツ側として行動していることに)(ヨーロッパの大抵の国でありうる問題でもありますが、その際たる存在というか)。
その戦後の世界を描いた有名な映画がこの本と同名の『灰とダイヤモンド』。
世界的に有名な映画監督アンジェイ・ワイダ氏の代表作にして、彼の映画がポーランド人の歴史意識を作った、とまで言われているのですが。


個人的になんていうのかな、氏の映画は残念ながらまだ一本も見てないのですが、彼のインタビュー読んでいる限りではちゃんとエンターテナーというか、映画をあくまでも映画として作っている、という印象で、なんというのかな? 映画そのものでなにかメッセージを伝えるという意図はないのかなぁ、ということを感じたのですが。
この、映画のあとに映画の脚本家の名前で出版されたけれど、「映画にいない人物」の存在もあるという、明らかにノベライズとは違う本も受ける印象は概ねそんな感じ。
なーんていうのかな、あくまでも本っていうか小説に出てくる感情が登場人物のものなんですよね、誰か特定の人間の視点ではなく、だから戦時中というか、戦争が終わりたてほかほか、ソ連の不気味な動きを睨んでレジスタンスもまだ地下に潜ったまま、という状況を描いた映画なのに群像劇だと表現もされるし。
監督の自伝的映画、とも言われるし、要するになんだか客観的なんですよね。
フィクションであっても“歴史”だって言われた意味もわからないでもないかなぁ。