「図説 海賊」増田義郎

そもそも「海賊」というものの定義を考えると、まあ海にいる無法者だよねー、という結論しか出てこない以上、この本の最初で人類が海に進出してからはずっといるよね、というのも至極もっともな話ではないかと思うのですが。
とはいえ「山賊」とはなにか? とは考えないんですよね。
そして、活動する領域が違うだけで全く同じものか、と言われると確かに重なる部分と違ってくる部分があるのではないか、と理屈じゃなくて皆感じるのではないのかな?


この本で扱われていたのは主にヨーロッパの国々で大航海時代、と言われるようになった頃、国の密かな承認を得て活動していた“私掠船”の類で、まあそれが緩やかに現れるようになった時代から、海軍力が強化されて必要性が薄くなり国家の掣肘を受ける辺りまで、というのがだいたいの範囲。
こうして自分でまとめてみるとえらいまた勝手だなぁw とは思いますものの。
もっと言ってしまうと海賊ってのは基本的に普段海で商売をしていて、それがなにかの拍子に海賊になった、というだけではなくて、海賊行為の傍ら貿易をしていたり、まあ比重的には逆であったりと完全に型には嵌まらない。
奴隷貿易なんかは言うに及ばず、交戦中の国家間の密貿易や、関税逃れなんてのもそれほど正直真っ当とも言えないし、それこそ略奪の末に得たものを売っている場合、その略奪が一過性だったり現地の人々が囲い込まれて奴隷状態で生産に従事させられていたり、売られた奴隷の買い手なんてことも当然あって。
海賊だけが果たして悪か、と言われるといろんな意味で大変疑わしい。
逆にまた、外海に漕ぎ出して行くということそのものが乱暴な話でもあるのかなぁと。