「仏像に聞く-鑑賞を深めるための基礎知識」江里康慧

前にまとめて読んでいた『日本の美術』の彫像関係の古いシリーズに続けて2種類めかな(著者さんは違ったものの、情報などは合わせていたようだったので)、で、そちらのシリーズでは「定朝」という人物を最初の仏師として紹介して、そこからの系譜として円派、院派、それから少し遅れての慶派という流れを扱っていたのですがこれ、専門の本で読むとなんとなく意味わかるものの、あくまでもそれ以前にも仏像があるんですよね、なのでまあ、そういう扱いは受けていなかったんですが。
大雑把にどういうことなのかってのは、ちょっと今の時点までの研究でいいので解説してくれると嬉しかったかも。
専門の仏師がそれ以前にはいなかったって意味なのか、それ以前は渡来人だったのか。
だいたいその辺なのかなぁ、というのもあくまで読んで感じたことだからな。

大雑把にこの著者さんは仏像を扱ってる中でも美術視点の人じゃないのかな、で、そういう意味で文献記録的なものは平易にわかりやすくまとめたのかなぁ、とも思っていたんですが、今まで何人かの著者さんとか、たまに見る仏像関係の語りとかを見ていてもそうなんだけども「こうやって見ろ」ってほとんど言わないよね。
こう見たらいいんじゃないかという程度の言い方はあるものの、なんというか、そもそも複数の視点の人を研究の基盤として内包しているからなのか、それともあるいは宗教のための作られたもの、信仰心の発露とされているものを美術品としての観点で見ること、研究することが多いためなのか。
なんか立場の違う相手にすごい寛容なんだよね。
それがあるいは仏像研究全体の清涼感と客観性を生んでいるのかなぁ、とぼんやり。