「1997年−世界を変えた金融危機」竹森俊平

アジア通貨危機”というのはまー、ものすごく大雑把にいってタイで始まり、東南アジアの数国を巻き込み、アジア圏ナンバー2である大国・韓国にまで至ったという政府の債務不履行のことで(大味すぎませんか)(さらに単純に言い過ぎると支払いに使うドルが足りなくなった! です)。
なんというか、その原因論はいろいろありますがここでは棚上げ。
むしろ多く語られていたのは「なぜ?」よりももう少し是非の判断がしやすい「そもそもの構造的な問題なのか/それとも一時的な問題なのか」というような方向で、この事態の収拾に投入されたIFM(アメリカよりの委託)は前者の判断でもってアジアのぶっちゃけて野放しであったブラック・ボックスの多い構造改革を迫っていたものの(要するに金を貸しているので立場が強いわけですな)、その後の回復を見るとやっぱり一時的なものじゃないのかなぁ、というのが筆者さんのご意見。
うん、その細かい是非はともかく、流れ全体は確かにそう判断できるかと。
(ヘッジファンドがこの機に乗じて暴れたよ! というのはこの場合はいわば崩壊に至る最後の一撃であって、原因その他は別のところにあるわけですね、“ポンド危機”なんてのは一人の男がイングランド銀行と渡り合った、とされてますが、若干話が別。)
(ただし、結果的に起こったことは同じではありますね。)


で、アジアは要するに透明度が低く、それでも儲かるから、と楽観的に西側の投資が行われていたのがこの一件を機に一変したよというのが主な内容だったのですが。
ここからさらにそこから経済の原則や、それに呼応する現代の経済学へと話が展開し。
今現在の不況についても触れている、というなかなかの本でした。良かった。