『美の巨人たち』東山魁夷「残照」(日本)
東山魁夷−Wikipedia
(1908.07/08−1999.05/06)
母上は静けさと荒さの融合、ということに大いに頷いていたわけですが、個人的にあんまり目が良くない(そして昔は無茶苦茶目が良かったんですが)、山が日常的に前面に立ちふさがるような地で育った人間にはそんな簡単に納得できるようなものでもなく。
だって本当にそんなふうに見えるんだよ! と思っていました。
遠くの山はやたら優しく見えるんですが、手近な山は荒々しいんですよね。でもこれ、ただの勘違いで実際には近づくと山肌の露出した山は大抵険しいです(緑に覆われている山は別ですが、でも険しくない山って人間が禿山にした以外は自然に木が生えるよね)。
父親が横暴で母親は貧しい生活を強いられ、自分が成長したら母親のために働こう、と心に思っておきながら画家の道に惹かれてしまい。美術学校に行くものの馴染めず、当然評価されることも難しく、そんな中、とある有名な日本画家に声を掛けられ娘さんと結婚させてもらうもののその後戦争に取られ、帰ると全ての家族を亡くし。
なにもかもなくした中で登った山で出会った風景がこの≪残照≫。
私はやっぱり、心象風景なのではなく、そのまま見えたままではないのかなぁ、と思うのですが、そこまで感動し、人生そのものを変えるほどのものってわかりやすいものじゃないのかなぁ。いや、その感動を人に伝えようとした時にわかりやすい変更を加えた、というのはもちろんわかりますが(形なんかは見たままではなくてもいいかと)。
荒々しさと優しさは、もともと風景に備わっていたのではと私は思うんですよね。
そして彼は、戦後最高の画家とも言われるような存在へと駆け上ったのだとか。