「建築探偵の冒険 東京篇」藤森照信

建築探偵の冒険〈東京篇〉 (ちくま文庫)

建築探偵の冒険〈東京篇〉 (ちくま文庫)

 

 

すごく正直に言うと著者さんと建築にまつわる人との会話がところどころに書き起こされていて、知り合いの人との場合はともかく、いかにも気のなさそうな合いの手が挿入されている辺り(そういう返答じゃ駄目って意味じゃないんですが、なんていうか自分が興味がない話をされたってことをわざわざ記してる辺りがなんか)、ある程度人となりを知っているからいいんですが、なんかちょっとなぁ、と感じないでもなかったんですが。
まあ多分、そういう部分も含めての一期一会の話ってことなんでしょうか。
どちらかというと犬を嗾けてきた洋館の持ち主から逃げるとか、そういうほうが面白かった気はします、建物見たいだけです! というのも、明治の頃からの旧家なんてものを持っている家の人が、急にそんなこと言われてもそうそう信用するわけにも、という気持ちもわりとどっちもわかるしねw
この本で特に面白かったのが個人的には渋沢栄一の話、ああ、兜町って渋沢氏がアウトラインを描いた経済の町になるべき場所だったのか、実際のところは彼と対立した三菱が作った丸の内(すごーく大雑把に政府の資金獲得手段でした)のほうに移ってしまい。
前からぽちぽち話を聞いていた日本郵船の話なんかも出てきて、ちょっと収穫。
というかもともと、旧幕臣として見ていいんだろうか、渋沢氏。身分が身分なので微妙にそれっぽくないんですけどね、三井の大番頭の三野村氏ももと孤児! と言われてびっくりしました、不勉強だとも思うんですが、い、意外と伝わってないのね。

まあやっぱり、一番の売りはあれ、彼が名前を付けたという「看板建築」じゃないでしょうか、関東大震災のち、周囲が皆作ってるし復興してるし、横目で見つつデザインを微妙に盗みつつ、なんとなくの統一性を見せたって話は面白いなぁw