「赤十字とアンリ・デュナン−戦争とヒューマニティの相剋」吹浦忠正
赤十字をナイチンゲールの作ったものだ、というふうに勘違いしている人はどうも現代にもいるらしいのですが、彼女は戦場での手当ては行ってはいたものの、それを組織化恒常化することには疑問を抱いていたらしく。
ただし、一度立ち上がった赤十字には尽力することもあったのだとか。
ちなみにアンリ・デュナンとしてはナイチンゲールが憧れだったっぽいですねw
基本的にデュナン氏は結局のところ“赤十字”を自分の目的のための手段としてしか見做さず、なによりも組織を「安定」させることを考えたかつての仲間からはだいぶ嫌われてしまってもいるようですが(しかし故郷は別に関係ないような、スイス人わからん;)。
なんというかこう、デュナン氏は人間として正しすぎたのかな、というのが実感です、彼から少し遅れたかだいぶ遅れたかの違いはありますが、ほぼ、デュナンの構想した通りに現実はちょっとずつ進んでいるのは間違いなく。
そもそも「自分の目的」と表現するとアレですが。
人間が人間としてすごすための尊厳を、というのが生涯唯一の望みで。
ある意味でたまに宗教家にも市井にも存在するようなお人よしが選んだのが、不思議なことにそのルール作りと組織の構築だった、というだけのことかもしれません。
(そして組織よりも目的が大事、うん、ちょっと仲間としてはやりにくい。)
途中の章から戦争がとにかく嫌いなトルストイが乱入してきまして(記述として並べられてるだけです)、わりと暴れてるんですが、兵士は死んだまま、生き返らないのが本当は一番いいのかもしれなくても、もう世界が進んじゃったんだからしょうがないじゃない。
名前があまり認識されていなくとも、デュナンの方針は確かに今の世界の一部です。